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不動産鑑定書の見方


鑑定評価書の見方

不動産の鑑定評価は『不動産の鑑定評価に関する法律』に基づき国土庁に登録された不動産鑑定士のみが携わることができます。そしてその鑑定評価の具体的な方法については平成14年7月に改正された【不動産鑑定評価基準】によって統一されています。

当社の鑑定評価書もこの不動産鑑定評価基準に準拠し、不動産鑑定評価に関する法律によって登録された不動産鑑定士等により作成されております。

しかしながら、鑑定評価書には鑑定評価上の専門用語が多く用いられ、一般にはやや難解と思われる部分もあります。鑑定評価書は鑑定評価額のみならず、どのような調査・分析・計算・検討・思考を経て結論に達したのかというプロセスが記載されています。このプロセスを記述した鑑定評価書を読んでいただくことで対象不動産の内容を的確に把握することができますし、結論としての鑑定評価額についてご理解いただくことができるものと思います。

本ページがその一助となれば幸いであります。

鑑定評価書の構成

当社の鑑定評価書は次のような構成となっています。

1.対象不動産の表示

2.鑑定評価額

3.鑑定評価の基本的事項

a)価格の種類

b)不動産の類型

c)価格時点

d)鑑定評価を行った年月日

e)鑑定評価の依頼目的

f)縁故または特別の利害関係の有無

g)鑑定評価の条件

h)依頼目的及び条件と価格の種類との関係

i)現地実査日

4.鑑定評価決定の理由の要旨

(1)一般的要因の分析

(2)地域要因の分析

(3)近隣地域の状況の分析

(4)個別的要因の分析

(5)対象不動産の最有効使用の判定

(6)鑑定評価方式の適用

A)原価法

B)取引事例比較法

C)収益還元法

(7)試算価格の調整

(8)鑑定評価額の決定

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鑑定評価の基本的事項

(1)価格の種類
鑑定評価によって求める価格には次の4種類があります。

正常価格 『現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されると見られる市場価値を表示する適正な価格』であり、換言すれば一般の取引当事者にとって妥当性を有する価格です。価格を求める鑑定評価にあたって通常求めるのはこの正常価格です。
限定価格 取引当事者が限定され、その結果成立する価格が一般の取引当事者には不合理となる価格です。たとえば、借地人が底地を買い取る場合や、隣地所有地を買収する場合、敷地を分割することで残地補償が必要な場合などにはこの限定価格を求めます。
特定価格 REITにおける投資採算価格や民事再生法における早期売却価格のように正常価格の前提となる諸条件を満たさない場合における不動産の経済価値を適正に表示する価格です。J-REITの物件の評価はこの範疇の価格になります。
特殊価格 市場における取引を前提としない場合に求める価格です。たとえば、神社・仏閣などの不動産や文化財等のように保存を目的とする不動産を評価するような場合です。

これらの価格の関係を図示すると次のようになります。

鑑定評価における価格の種類

(2)不動産の類型
宅地の場合、不動産の利用形態と権利関係により次のように分けられています。

更地 建物等の定着物がなく、かつ使用収益を成約する権利の付着していない宅地を言います。したがって、見た目に建物はなくても、借地権・地上権の設定されている土地は更地とはなりません。
建付地 建物等の用に供されている敷地ですが、建物所有者が自ら使用し、かつ建物と同一人の所有であることが必要です。
借地権 建物所有を目的とする地上権又は賃借権をいいます。したがって定期借地権も含みます。
底地 借地権の設定されている土地の所有権を言います。
区分地上権 地下鉄のトンネルや高速道路の高架橋のように地下又は地上の一部を利用する場合の権利をいいます。

不動産が建物と敷地とで構成されている場合には次の通りに分類されています。

自用の建物及びその敷地 建物とその敷地が同一の所有者でその所有者により利用されている土地建物をいいます。
貸家及びその敷地 建物とその敷地とが同一の所有者ですが、建物が賃貸に供されている場合をいいます。
借地権付建物 敷地利用権が借地権である場合の建物をいいます。
区分所有建物及びその敷地 いわゆるマンションのことです。

(3)価格時点
不動産の価格の判定する基準となる日でお客様の必要とする時期を指定することができます。ただし、何年も先の日付やあまりに過去の日付では資料を集めるのが困難なのでお引き受けできないことがあります。

(4)鑑定評価を行った年月日
鑑定評価の作業を完了した日になります。したがって、鑑定評価に用いた諸資料はそれ以前のものということになり、この日以降に発生した要因は鑑定評価額には反映されていません。

(5)鑑定評価の依頼目的
売買、交換、担保、補償、訴訟など鑑定評価を必要とした目的が記載されます。この場合、鑑定評価は依頼目的に沿って価格を算定しており、価格の妥当性は依頼目的の範囲内に限定されます。したがって、たとえば売買を目的とした鑑定評価書を交換や担保のために使用することはできません。

(6)縁故または特別の利害関係の有無
お客様と当社との特別の関係があれば記載することとなります。

(7)鑑定評価の条件
お客様の指定されたたとえば次のような鑑定評価の条件が記載されます。

・『古家が建っているが、売却するので取り壊したものとして評価してほしい。』
・『もうすぐ、新駅ができるのでそれを前提に評価してほしい』
・『隣地を買ってほしいといわれているが、買取の効果を価格にしてほしい』

その他、次のように鑑定評価の必要上の条件があります。
・実測面積が判明しない場合には登記上の面積を用います。
・お客様がご使用の建物についての収益価格は想定賃料により収益価格を算定します。
・取引価格の時点修正については公示価格等の地価指数を用います。

(8)依頼目的及び条件と価格の種類との関係
依頼目的と条件から鑑定評価によって求める価格の種類が決まってきます。

(9)現地実査日
実際に現地へ行って対象不動産の調査を行った日が記載されます。

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鑑定評価額の決定に至る過程

(1)一般的要因の分析

たとえば、人口が増加し、高度成長により所得が増加していた時代には不動産に対する需要が多く、住宅地の地価は上昇しました。この時期は高金利であっても、それを上回る所得の増加により需要は旺盛でした。また、オフィス需要の大幅な不足が予測されたバブル期には商業地の地価が著しく上昇しました。その後、公定歩合の引き上げ、総量規制による資金面の絞り込み、固定資産税・等による保有コストの引き上げ、国土利用計画法による取引価格規制、等々のさまざまな施策の結果、地価は下落に転じ14年連続で下落してきました。しかしながら、現在ではそれらの規制は撤廃され、また、史上最低の金利水準と量的緩和により徐々に景気回復してきたため、需給のバランスも徐々に回復し、東京都心部や主要都市の中心部では住宅地・商業地とも地価は上昇に転じました。個別の不動産の価格は売り手と買い手の需給関係によって定まりますが、一般的要因は全体の需給関係に影響を与えるものです。このように全般的な地価の水準に影響を与えるさまざまな要因をまず分析します。
マクロの分析

(2)地域要因の分析


不動産はそれぞれが独立した存在ではありますが、動産とは異なり、単独でその用をなすものではありません。たとえば住宅にしても道路,公園,学校,病院,商店,駅などと組み合わせることではじめてその効用が発揮できるものです。したがって、不動産の鑑定評価にあたってはその不動産がどのような地域にあるのか、その地域はどのような特徴を持った地域であり、したがってその不動産をどのように利用するのがベスト(最有効使用)なのかを分析する必要があります。この分析を地域分析といいます。
そのため、評価の対象となっている不動産が存在する地域に注目します。地域が異なれば不動産の価格水準も大幅に違ってきます。たとえば、山の手の住宅地にある土地と、郊外の工場地帯にある土地では価格の水準が異なるでしょうし、市区町村が違えばやはり価格に差が出てくるでしょう。このように、対象不動産がどのような地域にあり、またその地域がどのような特性を持っているのか、したがってその不動産をどのように利用するのがベスト(最有効使用)なのかを分析・判定する必要があります。これが地域要因の分析です。
地域要因を分析するには、まず着目すべき地域を定めなくてはなりません。これには次のようなものがあります。

『近隣地域』 対象不動産を含んでおり、その中にある不動産に、用途的な共通性が見られる地域のこと。
『類似地域』 対象不動産は含まないが近隣地域と同じような特性を持ち、近隣地域に代わったり、競合関係にあったりするような地域のこと。

分析する地域が明らかになったら次は要因の分析です。地域要因はそれぞれの地域の特性を形づくるものですので、地域ごとに異なっています。たとえば住宅地域なら日照の程度、商店や公共施設の近さといった居住する上での快適性や便利性に、商業地域なら繁華性などの収益性に、それぞれどのような影響を与えているかを判定できるような項目を重要視し、分析するのです。そしてその地域における不動産の標準的な使用方法(標準的使用)が何であるかを判定します。

最有効使用の判定の一般的例示

住宅地1 地積が60坪以下で容積率が100%以内であれば戸建住宅。
住宅地2 地積が300〜600坪で容積率が200%以上あればマンション用地
住宅地3 前面道路広く、多少の繁華性があれば1階店舗の併用住宅用地。
商業地 単体での地積・地型のほか立地、周辺環境との適合において最も収益性の見込める用途で事務所ビル・店舗ビル・併用マンション等の判定をします。
ミクロの分析

(3)個別的要因の分析

さらに、対象不動産そのものに着目したミクロの分析を行います。そもそも不動産は一つ一つ異なるものであり、全く同じものはありません。土地の大きさは勿論、形や地盤の具合が違えば価格も違ってくるでしょうし、建物の大きさ、新築か中古かといったことも重要な要素です。また土地や建物だけでなく、周囲の環境や対象不動産に関わってくるさまざまな規制も価格の形成に大きく影響します。このように、不動産それぞれに個別性を生じさせ、その価格を個別的に形成する要因を、個別的要因といい、対象不動産の価格を評価するためにはこの分析は欠かせません。

不動産の価格は、その不動産をベストの状態で使用すること(最有効使用)を前提にした価格を標準にしています。しかしながら、属している地域の特性によって何かしら制約を受けることもしばしばです。そこで、さきの地域要因の分析で判定したその地域の標準的使用をもとに、対象不動産がその個別性を持ったままの状態で、最有効使用が何であるかを明らかにします。この最有効使用は、現在、及びそう遠くない将来にわたって、ある程度長期間実現可能なもので、しかも一般に人々が採用するだろうと思われるものでなくてはなりません。

(4)鑑定評価方式の適用
不動産の価格を形成するさまざまな要因の分析が済んだら、いよいよ具体的な価格を評価します。評価の方式は大きく分けて3種類あります。これは、一般に人が価格を判定するにあたって、

1.費用がどれだけかかったのか(費用性)
2.市場での価格はどれほどのものか(市場性)
3.どれだけ収益が得られるか(収益性)

の3つの側面を考慮することに基づいています。不動産についてもこれらの側面を全て吟味することで、初めてその価値が明らかになります。したがって評価に当たっては、それぞれの側面を考慮した3つの手法を併用し、算出された3つの価格を把握・調整することで、合理的な価格が求められるのです。

A)原価法

これは対象不動産にいくらの費用が投じられたものか、つまりその不動産を再び調達するにはどれだけの原価が必要なのか、という費用性を考察する手法です。

土地と建物について、再調達に要した原価から、その使用や経年による価値の減少分を差し引いて、投資した元本の現在の価値を表示します。この手法によって求められた価格を、『積算価格』と呼びます。

B)取引事例比較法

これは対象不動産が市場でどれほどの価格で取引されるのか、という市場性を、実際の取引の事例から考慮する方法です。

正常な取引事例から地域・用途・経年・数量等の類似したものを選択し、これを比較して求めます。比較の方法は取引価格×事情補正×時点修正×標準化補正×地域要因×個別的要因×面積比較の相乗積により行います。

これらを相互に比較して、対象不動産の市場での価値を求めます。この手法によって求められた価格を、『比準価格』と呼びます。

C)収益還元法

これは対象不動産を利用することで、どれだけの収益が生み出されるか、という収益性を考慮した方法です。

対象不動産から得られる賃料などから、その不動産を利用できる期間の純収益(全ての収益から費用を差し引いたもの)の総和を求めます。この手法によって求められた価格を、『収益価格』と呼びます。

D)その他の手法

不動産の個別性に応じて、さきに述べたA)〜C)の手法以外にも、価格の3側面のいずれかを考慮したその他の手法を用いることがあります。原価法の一種の開発法、収益還元法の一種である土地残余法などがあります。

●開発法 原価法の1種で面大地の更地についてマンション・宅造を想定してその販売見込総額から建設・造成コストを控除して求めます。
●土地残余法 収益還元法の1種でマンション・ビル等の賃料を基に更地としての収益価格を求める手法です。
●有期還元法 収益還元法の1種ですが、永久的な収益ではなく、建物の残存耐用年数等の期間を限定した収益を基にした収益価格を求めます。
●DCF法 一般の収益還元法は単年度の収益を基にするのに対し、多年度の収益の変動予測を織り込んで収益価格を算定します。

評価にあたっては原則として、3方式を併用すべきですが、様々な事情により、1または2の手法のみによらざるをえないこともあります。その場合にも、用いられなかった他の手法の考え方をくみ取るようにして、価格の3面性を十分に考慮する必要があるのです。

(5)試算価格の調整及び鑑定評価の決定

以上の三方式によって求められた価格は理論的には一致するはずですが、実務上は極めてまれです。そこで、鑑定評価額を決定するにあたって価格の差が出たのはどういう理由か、査定資料等の制約から信頼性のある価格はどれか、適用した手法を再検討することにより説得力のある価格はどれか、したがって、どの価格を重視すべきか、またその価格が実際の取引において割高・割安感があるかなどを再検討します。

そして最後に専門職業化としての良心に従い、妥当と考えられる価格を鑑定評価額として決定します。

その他
・不動産鑑定士等の守秘義務により鑑定評価の過程によって知り得た事実を他に漏らすようなことはありません。
・交付いたしました鑑定評価書は作成後5年間は保存いたしますので、後日鑑定評価書の写しが必要な場合はご連絡ください。

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